ブライダルブーケの押し花&カリグラフィーで、
結婚式の思い出を美しく残すお仕事をしている輪湖もなみさん。
ご自宅で、プレストブーケデザイナー養成のレッスンや
カリグラフィーのレッスンもしています。
ご自身がアレンジする花と同様に、
やさしく、ゆったりとした雰囲気をもつ輪湖さん。
その魅力の源を探しに、ご自宅でお話を伺ってきました。
3回連続でお届けします。
——まるで洋書に出てくるようなお住まいですね
もともとインテリアが好きで、映画で海外のインテリアを見ては、
「日本と全然、ちがう」「どこが違うんだろう……」と
漠然とした憧れを抱いていました。
映画のなかでは、「逃亡者」(ハリソン・フォード主演)で観た
ダウンタウンのうらぶれたアパートの一室に衝撃を受けて……。
貧しい家なのにドアのまわりにケーシングがしてあって、
「ふつうの人が住んでいる家もインテリアがちゃんとしている!」って。
ハリソン・フォードが、逃げている途中で一瞬通るだけの
部屋なんですけど(笑)。
この家は、輸入住宅メーカーに依頼して、2000年に建てました。
当時は、参考になる洋雑誌が
麻布のナショナルマーケットで扱っていた「マーサ スチュワート」
くらいしかなくて。参考にしました。
「なぜカッコいいの?」を考えていくと、
窓やドア、階段、ケーシングなどのディテールが違うことに気づいて
輸入住宅メーカーに、気に入った部材を輸入してもらって
1年以上かけて家づくりをしました。
暖炉は、パーツのひとつひとつのデザインを選んで
オーダーしてつくってもらうんですよね。
家づくりは、とても楽しい経験でした。
——エレガントなスタイルがお好きなのですか?
家を建てた当時は、北米スタイルやブリティッシュトラディショナルな
インテリアにしていましたが、
最近は、工業的で無機質なマテリアル、モダンなもの、シャビーなものなどを取り入れて、ひとつのスタイルにとらわれない、遊び心のある空間にしていきたいと思っています。
ケーシングや窓などベースになる部分はエレガントにしたので、
白、ダークブラウン、ブラックを基調に、
季節ごとに色使いやスパイス小物でトレンドを取り入れるようにしています。
マントルピースは、「床の間」の役割をするビューポイントなので、
ここも季節ごとに模様替えをします。
John Derianとアスティエ・ド・ヴィラットがコラボした
マーブル(ターコイズ、オレンジ、ブラック)の平皿がとても気に入り、
今年の夏のインテリア全体の色やテーマを考えました。
NYのアーティストで、熱心なアンティーク収集家である
ジョン・デリアンが手がけるデコパージュは、
自身のコレクションからインスピレーションを受けた、
動物や植物、景色、メッセージなどがモチーフ。
私自身のライフワークである“文字と花”のデザインも多くて、
「ここにも同じ趣味の人が」と思ってしまうんです(笑)。
インテリアのキーワードは、
・田舎にあこがれる都会人
・花とグリーンが美しく映える
・基本カラー(白、ダークブラウン、ブラック)
+ その季節や雰囲気にあったカラーで味つけ(ファッションと同じ)
「ないなら作る!」というのも基本で、家具や小物の色を塗り替えたり、
しょっちゅうDIYもしています。
LDKへの扉を開けた正面の壁には、カリグラフィーの作品を飾って。
黒字のカリグラフィーの額は、カッパープレート体の作品。
カッパープレートは、アメリカ独立宣言の書体として有名です。
その下は、高橋義雄先生が描いてくださった私のサインで、
鳥の絵は、先生が描かれたフラーリッシングの鳥です。
高橋先生は、87歳のご高齢ながら今でもレッスンを続けておられ、
「私もああいう風になりたい」と憧れる存在なんです。
このスペンサリアン体を生み出した、
ブラッド・ロジャー・スペンサー(1800年NY生まれ)は、
オーナメンタルペンマンシップの黄金時代を築いた人です。
スペンサーは、自然にとても興味を持っていた少年時代に
「なぜ自然が美しいか?」を考え、
「自然には共通した一定のリズムがあり、人間を落ち着かせるのは、
曲がった直線とオーバルで形作られている」と
いう結論にいたりました。
これを文字にもあてはめれば美しく書きやすいのではないか? と
編み出されたのが、スペンサリアン体です。
私自身も自然界のものが好きなので、共通するものを感じます。
私のライフワークは、“文字と花”。
“文字と花”は、最も身近で、手軽なアート。
紙とペン、道ばたの小さな草花にも、心が満たされる美しさがあります。
この素晴らしさ、美しさを追い求め、広くお伝えしたいのです。
輪湖もなみさんのブログ 「美的な押し花・カリグラフィー・花生活」
http://ameblo.jp/monami-k/
(つづく)
撮影 坂本道浩
取材・文 藤岡信代