素敵なお住まいを訪ねる新企画の第2弾。
スタイリスト石井佳苗さんのセンスの源は・・・? 
スタイリストになったきっかけや
好きなものについても伺ってきました。


石井さん主宰するウエブサイト
「Love Customizer」
http://lovecustomizer.com/

インテリアDIYの著書
「簡単!インテリアDIYアイデア Love Customizer」




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雑誌やウエブサイトでもたびたび紹介されている
石井佳苗さんのお住まい。
象徴的な存在は、このキッチンでしょう。

レストランの厨房にあるような、
カウンター下がオープンになったステンレスキッチン。
ブリキ板をまげて作ってもらった換気扇フード。
(中の換気扇は、ごく普通のものなんだそう)
モザイクタイル張りの壁は、ペイント壁とミックスされて
独特の雰囲気を醸しています。

「●●スタイル、と言えるようなインテリアにならないように・・・。

甘くなり過ぎないように・・・というのと、
スタイリングの仕事ではナチュラルテイストが多いので
“自分の違う部分を出したい”、と思って
自分の好きなモダンなものを置いています」

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一見、ラフでカジュアルな「カフェ風キッチン」に見えますが、
DIYの棚には、名だたるデザイナーの逸品が
さりげな~く並んでいます。

ソットサスがデザインしたペッパーミル、ジャスパー・モリソンのコンテナ、リカルド・ダリージのナポリタンコーヒーメーカー、アレッサンドロ・メンディーニ・・・
「アレッシィ」が扱うデザイナーの名前が次々と・・・。

「独立する前は、カッシーナで10年、
アレッシィのVMDを担当していました」。

専業主婦をしていた20代から30代にかけて
「FOB COOP」や「デポー39」「アクタス」など
次々に東京にオープンするインテリアショップを見てまわり、
「インテリアって楽しい!と目覚めた」という石井さん、

次はインテリアの仕事をしよう!と
インテリアコーディネーターの資格をとり、
当時の「カッシーナ」が青山本店をオープンするタイミングで再就職し、
本社で営業として勤務。
モダンな感覚は身に着いたものなのです。

なるほど、リビングダイニングをよく見ると、
デザインの違うチェアがそこここに。
デザイン好きには椅子好きが多いと言うけれど・・・。
「1階は、室内だけで11脚。デッキを入れると16脚あります。
2階には10脚。ときどき、自分でも数えています(笑)」

チェアは、雰囲気に合わせて入れ替えているのだそう。
基本的に、北欧やイギリスの古いものが多いそうですが、
「いちばん好きなチェアは?」と尋ねると、
「スーパーレジェーラ」と即答。

インテリアコーディネーターの勉強をしたときに知り、
当時、六本木のアクシスにあった「カッシーナ」のショールームに
何度も観に行った思い出があるのだとか。

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名作中の名作、と名高いそのデザイナーズチェアは、
なんと、キッチンの間仕切りを兼ねた棚の横に、
UK版「ELLE DECO」の山とともに、置かれていました。

「直線的なラインのものが好きなんですが、
スーパーレジェーラはほんとうによくデザインされていて、
特別な感じを抱いている、大好きなチェアです。
インテリアの世界に入るきっかけになった家具でもあるし」

大切なチェアを、日常のシーンに置いて楽しんでしまう。
それが、いまの石井さん流インテリアを象徴しているよう。

ナチュラルでも、モダンでも、カフェ風でも
デザイナーズでもない、
一言ではくくれない、“好きなもの”が一体になった空間。

そのセンスは、階段や洗面台、玄関といった
小さなスペースにも発揮されています。

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「好きなものを合わせても、まとまるインテリアに
どうやったらできるのですか?」と最後に質問してみました。

「私は、トータルのバランスを空間でとらえているかな・・・。
食器だったら、それだけを見るのではなくて
テーブルに合うかな?と考えてみます。
テクスチャーやテイストは混ぜたいので、そのバランスも考えます。

もの選びもいろいろ失敗していますよ~。

失敗しないと、その理由がわからないから
自分で合うかどうかを考えて、試してみることが大事。
失敗しながらもやってみることで、成功率が上がると思うんです。

インテリアは完成させると止まってしまう、と思います。
“インテリアは生きもの”と思っているから、
毎回、インテリアが違っているね、と言われるのが楽しい。

自由度をあげるために、
照明の位置が変えられるように電源を考えておくとか
テレビの位置が変えられるようにコンセントも配置するとか
そういう工夫もしています」

キッチンのペイントも、「次は何色にしよう・・・」と思案中なのだそう。
石井佳苗さんのインテリアは、きょうも現在進行形です。

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撮影 坂本道浩
取材・文 藤岡信代