恵比寿のアトリエと、三鷹市のご自宅で
カルトナージュのレッスンをしながら、
年に数回、雑誌や単行本への作品とレシピ提供をしています。
今年は8月現在で、
納品済みのものも含めてあと4冊の発行が予定されているそう。
先日、メールマガジンの発行を始め、
10月からは、これまでご要望が多かった通信レッスンの募集を
開始する予定で、現在準備を進めています。
活躍めざましい井上さんに、あらためて作品づくりについて伺いました。
ご自分の作品の特徴は、どんなところにあると思いますか
色使いや、布合わせを評価していただくことが多く、
ありがたいなあと思っています。
カルトナージュの作品は、生き物ではありませんが、
「ペットのように、そこにいるだけで
癒してくれたり、楽しくしてくれたりする存在」
であってくれればいいなと思っています。
「幸せ感があるもの」を作りたい、と意識をしています。
作家になろうと思ったきっかけは?
いちばん最初に、私のことを「一人前の作家扱い」してくれたのは、
実は窪田千紘先生です。
その頃の私は、
「家で月に数回、教えることができればいいな~」という感じで、
「カルトナージュの先生」になりたいなと思っていました。
作家になる、なんて、頭の片隅にもありませんでした。
作家なんて、なろうと思ってなれるものではないし、
ほんの一握りの選ばれた才能のある人が
なるべくしてなるものだ、と考えていました。
窪田先生は、そんな生ぬるい意識の私に、
「井上さんは作家だよね!」
「作れる人はたくさんいる。
でも、作家としてやっていくには意識を変えて、
たくさんつくらないと」
「作家はスピードだよ」
と会う度に、それはそれは熱く声をかけてくれました。
今思うと、かなりハードルの高い問いかけだったなあ
と思います。しかもいきなり。
でも、単純な私は、
「え?作家ってなろうと思ってなれるの?」
「たくさん作ったらなれるんだ」
「はやく作ったらなれるんだ」
・・・だったら、早く作れるようになろう、
たくさん作ってみよう。と思いました。
そうしてなんとか作品を作っているうちに、
手芸誌の読者紹介ページに掲載されたことがきっかけで
雑誌や単行本への作品提供が来るようになり、
「お金をもらって作品提供をする」作家に
本当になってしまいました。
出会いってすごいです。
作品のインスピレーションはどこから?
近所のホームセンターや東急ハンズをふらふらしながら、
「このかわいくない(でも質実剛健で、とっても使いやすそう)なものを、
なんとかかわいくできないものか」
「この仕組みをカルトナージュの技法で再現するにはどうしたらいいかな」
みたいなことを常に考えています。
作品づくりで大事にしていることは?
私の作品は、出版物に作り方を提供したり、
実際に教室のレッスンで作っていただくものがほとんどです。
ですので、完成した作品単体だけでなく、
作っていただく時間と、完成させたものを実際に使う時間、
そこまで含めて『作品』と考えています。
皆さんには、作ってもらう時間も、
素材に触れることで気持ちが明るくなったり、
癒されていただきたいので、
奇麗な色あいの作品になるように心がけています。
作品には意図的に難易度を設定していますが、
私以外の人が作っても、一定レベルの仕上がりになるように
作り方を調整しますので、
見た目は同じでも数パターンは試行錯誤します。
その後、実際に使ってみて、
使用感を確認してから発表します。
このブックカバーはもう2ケ月毎日使っていますが、
どんどん手になじんで来ています。
簡単に作れますし、久々に
いい作品がつくれたなと思っています。
今回は、今年の夏に流行だった、
赤、青のトリコロールカラーで作品をつくりました。
マリンを意識はしているので、
ボタンに貝っぽいつやがあるものをセレクトしたり、
シャビー感のある素材をあわせたりしていますが、
大人の女性が普段づかい出来るように、
やりすぎないようにしました。
布は今、大人女子にたいへん人気のあるブランド
「ティルダ」を使っています。
モチーフはかわいいデザインですが、
コレクションごとの色設計が素晴らしくよくできていて、
新しいコレクションが出るたびに、
どう使いこなしていこうか考えるのが楽しいです。
撮影&スタイリング 窪田千紘
撮影 南都礼子