PIANO SALON 主宰&フォトスタイリスト OTOHAです。

“おとな女子ピアノ”を楽しんでいる方々へ
お勧めの楽譜をご紹介しています。

今年はフランスの作曲家エリック・サティの没後90年、
来年は生誕150年ということで、
サティの芸術をテーマにした展覧会やTV番組、コンサートなどが
数多く開催されました。

誰もが日常のどこかで耳にしたことのあるサティのメロディ。
ぜひ、弾いてみたいという方も多いのではないのでしょうか。

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そこで、サティの曲を練習しながらステップアップできる
「サティで始める大人のためのピアノ・レッスン」を
2回に分けてご紹介します。

著者は、サティ弾きとして、さまざまな方面でご活躍の
ピアニスト柴野さつきさんです。

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まずは、このテキストの魅力を大きく3つ、ご紹介いたします。


1.サティとはどんな人なのか、どのような音楽人生を送ったのか
知ることができる。

エリックサティ(1866~1925)は、1866年 フランスのオンフルールという
海沿いの村で生まれました。
西洋音楽の伝統に新しい道を開いた革新的な作曲者として
ドビュッシーやラヴェルなどをはじめ、
多くの芸術家たちに影響を与えました。

この本では、彼の音楽人生を大きく3つの時代に分けて、
さまざまな興味深いエピソードを交えながら紹介しています。

この記事をご覧のみなさまにも、
柴野さんの言葉を一部引用しながら、
サティの音楽史を簡単にご紹介いたします。


~神秘主義の時代~
気難しく人付き合いの苦手なサティは、パリの音楽学校を中退し、
モンマルトルのカフェやキャバレーで伴奏ピアニストをしていました。
そして、中世の音楽や神秘時代の影響がみられる
「オジーブ」「サラバンド」「ジムノペディ」「グノッシェンヌ」など
数多くの名曲を生み出しました。

~ユーモアの時代~
サティ27歳のとき、フランスの画家ユトリロの母親で画家の
ショゼンヌ・ヴァラドンと生涯唯一の恋愛をしますが、
それもたった5か月で終わりを迎えます。
そして32歳でアルクイユという工場街へ。
この頃、「犬のためのぶよぶよとした前奏曲」「梨の形をした3つの小品」
「気むずかしい気取り屋の三つの上品なワルツ」など
詩的で、ユーモラスな題名の曲がたくさん生まれました。

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~家具の音楽の時代~
「家具の音楽」とは、家具のように自己主張をしない音楽、
人から意識的に聴かれることのない音楽のことで、
彼のこのコンセプトに基づいた曲作りは、まさに現代のBGMや
環境音楽の先駆けとなります。

晩年は、バレエ音楽や無声映画のための音楽も数多く作曲し、
中でもジャン・コクトーやパブロ・ピカソとコラボした「パラード」や
同じメロディを840回繰り返す手法を用いた
「ヴァクサシオン」などは、当時も大きな話題となりました。

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2.ユニークな曲のセレクト

ジムノペティ、ジュ・トゥ・ヴなどの有名な曲から
ウィットに富んだユーモア時代の曲まで
すべてサティの曲、13曲が課題曲となっています。

ステップごとに並んでいるため、ピアノを弾き始めて間もない方、
久しぶりに弾くので、どこから練習してよいかわからないという方、
サティをより深くピアニストから学びたいという方など
それぞれお好きなところからスタートできます。

出版社リットーミュージックのこちらのサイトに
曲目などコンテンツが書かれているのでどうぞご覧ください。
(テキストに付録されているCDの音源や本の立ち読みもできます) 。



3.理論的な説明とわかりやすい解説

テーマごとにイラスト、写真なども使って、
テクニック上達のポイントをとても論理的に記してあり、
なるほど、そうか!と感じる方がたくさんいらっしゃるのでは
ないのでしょうか。

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サティの曲は謎解きのようなものだと柴野さんはおっしゃいます。
愛情溢れる解説で、新たなピアノ表現の楽しさと出逢うことができるでしょう。


最後に私が、このテキストの課題にもなっている「ジムノペティ 1番」を
演奏しましたのでお送りいたします。
「ジムノペティ」とは、ギリシャ語のギュムノパイディアイの仏語訳で、
古代ギリシャの都市スパルタの祭典のこととバルビエ
(柴野さんが師事なさっていたサティ研究者でもあるピアニスト)は
述べてらっしゃいます。
生涯にわたって古代ギリシャに深い関心を寄せていたサティの
心のベースともなる曲。
海辺で生まれたサティをイメージして撮った写真たちと一緒に御覧ください。

Movie



後編では著者柴野さつきさんへのインタビュー記事をお送りします。

柴野さつきさんHP http://www.satsukishibano.com/


ピアノ演奏&写真撮影 *OTOHA*