PIANO SALON 主宰&フォトスタイリスト OTOHAです。
“おとな女子ピアノ”を楽しんでいる方々へ
お勧めの楽譜をご紹介しています。
前回は、「サティで始める大人のためのピアノレッスン」の
テキストの魅力をお伝えいたしました。
今回は、フランス留学中、サティが晩年を送ったアルクイユの街に
住んでいらしたという、著者の柴野さつきさんの
メッセージをお伝えいたします。
(エリック・サティの肖像 ≪アルクイユのアメル写真館≫
「エリック・サティとその時代展」作品集より)
~この本の中でサティとの出逢いのことを書かれた場面が
とても印象的でした。
柴野さんにとってサティの音楽の魅力って何でしょう?
サティの音楽との出逢いは、人とのそれにたとえると
決してひと目ぼれとかではなくて、
何か心にひっかかって、気が付くとその人のことを考えている、
そんな感じでした。
初めて「ジムノペティ」を弾いてみたとき、
譜面は簡単なのに演奏がしっくりこない。
どうして?
音楽大学であんなに難しいことやってきたのにって。
今思うことは、サティは、大人の曲だということ。
子どものように無意識に弾けるというのではなくて、
自分とじっくり向き合って、思考していくことで、
サティはより魅力的になっていくと思います。
~サティの音楽は、家具の音楽とも言われていますよね。
出逢うきっかけ、心をつかむきっかけは、BGM的であっても
かまわないと思いますが…。
でも、サティの音楽というのは、
単なる癒しの音楽ではなく、もっと内向的なもの。
サティは生涯孤独でとても貧しかった。
人付き合いが苦手で、自分のやりたいことがどうも伝わらない。
自分の音楽が、当時の人たちにとってBGMになりつつあったときも
自分の嫌いなサンサーンスの曲をコラージュして
わざとBGMになるような曲を書いたりしてたの。
彼なりに一生懸命皮肉ってた(笑)
~このテキストにもクレメンティのソナチネをパロディにした
「官僚的なソナチネ」がありましたね(笑)
そうそう(笑)あれもそうね。
変なタイトルの曲もいっぱいあったでしょ?
有名なジュ・トゥ・ヴとかは、酒場で生活のために書いた曲ですし。
彼はどうしても売れたかった。
名声も欲しくて、お金も欲しくて、嫉妬心もあって…
サティってそんな人間的な人。
そう思うと身近に感じます。
~おとなになってピアノを弾く魅力とは何だと思いますか?
音楽でも写真でも同じだと思うのだけれど
演奏って潜在的にその人が持っているもの、意識的にやっていること、
すべてが立ち現れるでしょう?
技術的には、子どものときのように簡単にハードルを乗り越えることは
できないけれど、耳を使うことで、
たった一音で、生きてきた分だけの表現をすることができる。
意識をもってやるというのは、大人ならではの特権です。
無意識では子どもにかなわないけれど、
思考してきた分、凝縮して音に現れるようになる。
その点でもサティの音楽は大人にふさわしい!
人それぞれの人生の分だけサティがあるって、
とても素敵だと思います。
おひとりでも多くの方が、この本を手にとって、
大人ならではのピアノを弾く魅力を感じていただきたいと思います。
最後に私が、このテキストの課題にもなっている「ジムノペティ 1番」を
演奏しましたのでお送りいたします。
「ジムノペティ」とは、ギリシャ語のギュムノパイディアイの仏語訳で、
古代ギリシャの都市スパルタの祭典のこととバルビエ
(柴野さんが師事なさっていたサティ研究者でもあるピアニスト)は
述べてらっしゃいます。
生涯にわたって古代ギリシャに深い関心を寄せていたサティの
心のベースともなる曲。
海辺で生まれたサティをイメージして撮った写真たちと一緒に御覧ください。
「サティで始める大人のためのピアノレッスン」
柴野さつきさんHP
ピアノ演奏&写真撮影 *OTOHA*