PIANO SALON 主宰&フォトスタイリスト OTOHAです。
“おとな女子ピアノ”を楽しんでいる方々へ
お勧めの楽譜をご紹介しています。
クリスマスによせて 「シベリウス」のピアノアルバムから
「樅の木」をお届けいたします。
2015年は、フィンランドの作曲家、ジャン・シベリウスの
生誕150周年でした。
彼の代表作である「フィンランディア」は、今年一年
世界中のオーケストラによって各地で演奏されました。
壮大な「フィンランディア」が大きなキャンバスに
描かれた油絵だとしたら、
このピアノ曲集は、森の散歩中にスケッチした
水彩画集でしょうか。
その中でもこの「樅の木」は、ロマンチックなフレーズが
幾重も重なり合い、短い中にもドラマを感じます。
レベルは、中級レベル。
楽譜はそれほど難しくなく、表現の楽しさを味わえる
大人女子ピアノ世代にふさわしい曲です。
楽譜を編集なさったのは、フィンランド在住のピアニスト、
館野 泉氏。
2002年に脳溢血で倒れられた後、左手のピアニストとして
79歳になられた今も世界を舞台に活躍なさる姿は、
感動と勇気を与え続けています。
館野 泉 HP
この曲集が出版された約40年前当時、日本では
ほとんど北欧音楽の曲集はなかったとのこと。
まさにその後、音楽における北欧ブームが起きる
きっかけともなった曲集とも言えるでしょう。
(葉書は、館野 泉さんが撮影なさったフィンランドの仕事部屋)
このピアノアルバムに収められている
「ピアノのための5つの小品」Op.75は、
「ピヒラヤの花咲く時」、「孤独な松の木」、「はなこやぎ」、「白樺」、「樅の木」
とすべて樹の名前がつけられていることから、
館野さんによって「樹の組曲」と名付けられました。
この5曲が一冊のアルバムにまとめられたというのも
世界でも初めてのことだそうです。
その楽譜に添えられた館野さんの解説がまた、素晴らしい!
シベリウスの家でも演奏したエピソードも織り交ぜながら
愛情深くそれぞれの曲について語ってくださっています。
さて、「樅の木」といえば、
華やかなクリスマスツリーが思い浮かびますが、
シベリウスの想う樅の木は、それとは趣が異なります。
「一年を通じて緑の樅の木は、北欧では永遠の命の象徴だ。
しかし命が永遠であると同時に、死もまた永遠なのだ。
樅の森は北欧人の心に、魂がそこから出てき、またそこへ
帰っていく永遠の生と死の象徴として様々にすがたをかえて
住んでいる」
ー「樅の木」の館野 泉氏の解説より 引用ー
光のない長い北欧の冬においての存在の尊さのようなものを
感じます。
また、今もフィンランドでは、クリスマスイブの正午、
古都トウルクの大聖堂の金が打ち鳴らされ
「クリスマスの静寂」が全国に宣言され、
26日まで街は静寂に包まれるそうです。
北欧のクリスマスのついて書かれた館野 泉さんのブログ
大切な家族と過ごせることに感謝し、
また、自分の内なるものと向き合ってみる。
今年は、そんな静かなクリスマスを送ってみようと
この曲を弾きながら思いました。
では、シベリウス作曲 「樅の木」を写真と共にご覧ください。
Movie
文・写真撮影・ピアノ演奏 *OTOHA*
BLOG: otoha-diary
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