『普通の服をハッとするほどキレイに着る』で、
40代からのおしゃれとしてマダムが推奨しているのが、
“自分の制服”を持つことです。
インタビューには、秋冬の“制服”でいらしていただきました。
 

インタビュー第1回はこちら ↓
大人の女性のロールモデル現る!~佐藤治子さんインタビュー(1)


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本の中でも紹介しましたが、毎年、私は同じ制服です。
ボトムスはテーパードパンツ、白シャツにVネックカーディガン、首元にカレ。
変えるとしたらロジェ・ヴィヴィエの靴だけ。

今年は、赤茶系とかベージュ系を着たい気分ですね。
ホワイトのマイブームは去年くらいからで
オフホワイトはずっと着ていますね。
白を着るとレフ板効果で、顔の色が明るくなります。
 

―― 制服をなかなか決められない…という人は、どうすればいいでしょうか?

たとえば、セーターの衿あきでも、
自分にとても似合うとか、ちょっと苦手とか、あると思うのです。
セーターを選ぶときも、まずえりぐりの形で選びますね。

私は痩せているから、Vネックはあまり合わなくて
詰まったものか、ボートネックです。

気に入った、似合う形があったら、
Tシャツでもカーディガンでも全部同じ形でもいいじゃないですか?

いろんなデザインをもたなくても良いと思います。
買い物をするときに、よく「この形は持っているから…」と言うでしょう?
でも、同じ形でも色違いは持っていませんよね?

私は、同じ形の紺のカーディガンでも
素材違いのものを5枚くらい持っています。

カーディガンは、インナーに白を差したいのでVネックしか着ないです。
白のTシャツも“制服”のひとつですが
白を差すと、苦手だった色も着ることができます。
たとえば、私は青みのピンクは苦手だけれど、
白を差すと大丈夫なの。
 

―― 白のTシャツのあきも大事ですよね。
マダムはどうやって選んでいらっしゃいますか?

やっぱり似合う、似合わないがあるので、確かめて選びます。
今年は、ユニクロのスーピマの丸首がちょうどよいあきで。
私は、1シーズンに白のTシャツを20枚くらい買うかな。


―― えー!!同じものを20枚ですか? それを一度に買うんですか?

最初に5枚買って、5枚ずつ買い足していって最終的に20枚くらいになりましたね。

というのは、Tシャツは真っ白で着たいから。
本当は着捨てにしたいくらいなんです。

演出家の久世光彦さんの著書で、白い運動靴をいつも愛用なさっていて
1000円くらいの安いものをたくさん買っておいて
毎回、おろしたてを履く、1回で捨てちゃう、というのを読んだ記憶があるんです。
そのこだわりがダンディな久世さんらしくて、カッコ良いなと思いました。

白いTシャツは「白さ」が命。
 
最近はポリウレタンが入っているから塩素系の漂白剤が使えないので、
何回か洗っているうちに、どうしてもくすんでくるの。

目に眩しいくらいの白いTシャツが、私は好きなので、
それで20枚くらい買って、ひと夏着て、
くすんできたら、ユニクロのリサイクル箱に出しています。
できるだけまっさらをおろしたい、というのがあるから。
毎年買い替えるアイテムです。
 

―― それをはっきりおっしゃるところがいいですよね。

1万5000円のTシャツを買うよりは、1000円のTシャツを15枚買ったほうが
絶対にお得だと思うんです。
本にも書いたのですが、高いものを買っても結局、白がくすんでくるのだから、
だったら、着捨てるくらいの気持ちで真っ白な、
目にまぶしいくらいの白Tシャツを
身につける。
逆にVのカシミアカーディガンは、20年くらいは平気で着ていますよ。
アイテムにより、投資する値段もメリハリを付けることが大事です。



―― “制服”にたどり着くまで、試行錯誤の時代はあったのですか?

長かったですよ~。
仕事がら、30代、特に40代はトレンドのものを着ていました。
それも、海外ブランドのモード最前線の服です。
「私を見れば海外のトレンドがわかる」というくらい(笑)。
そうやって着たおした結果、ここにたどり着いているということは
あるかもしれません。


―― いまは迷いはない、という感じですか?

迷いはないというか、
自分が着るファッションは、無理しないで自然体でいられることが一番。
憧れのブランドもないです。
過去、ほとんどのブランドに手を通してきましたから。

でも、ファッションという文化は大好きですよ。
オートクチュールの技術には敬意をはらっていますし
ファッション史や映画との関りも興味があるし、それを知るのはとても楽しい。

自分自身が着るファッションに憧れは、もうないですね。

ただ、いつかは「あのブランドを着たい」という憧れと望みは
持ったほうがいい、と思いますね。
そうじゃないと、夢がないでしょ?日々のリアルクローズだけではね。
「いつかはシャネルが似合う女性になりたい」というような気持ちを持つことは大事だと思う。

―― シャネルが似合うようになるでしょうか?

シャネルは、まともに買うと倒れるくらい高くなっているので
ヴィンテージがおすすめですよ。
窪田さんはヴィンテージがお似合いになりそう。
代官山の「スミス・アーティーク」には、ときどきいいものがあります。
でもね、こればかりは出会いですからいつでもと言うわけにはいきませんね。



―― 40代、50代の方たちのふくよかな人たちには
何をおすすめしますか?

ふくよかな人は、隠そうとしないほうがいいので、
勇気をもって、自分をさらけ出す(笑)。
「一度、さらけ出したら平気になりますから」って言っているのですが、
隠し癖がついちゃうと、「隠そう、隠そう」としちゃうのね。。
欧米のおしゃれなマダムたちは、お腹ポッコリでも、二の腕が太くても
下手に隠さず堂々とファッションを楽しんでいて素敵にみえる。

チュニックなんか着るとよけいに太って見えるので、
ある程度、ゆとりのあるもので、生地が薄くないものがおすすめです。
シャキッとした生地の、ちょっとハリがあるもの
たとえば、ロングシャツなどを着ると、すごくきれいに見えると思います。

本の中でおしゃれの秘訣は「プロポーションを保つこと」と書いたら、
猛反発にあいましたけれど(笑)、
特に、歩くときの姿勢には気をつけたほうがいいですね。


―― 『スーツケースの中身で旅は決まる』のほうでは
ファストファッションのアイテムも紹介されていますね。

ファストファッションの中には、
「これはお買い得」というものが何点かポン、ポンと混じっています。
それを見つけるのが楽しみです。

H&MとかZARAのウィンドウに飾っているものには、
クオリティの高い、価値のあるものがありますね。
生地も縫製もよくて、「たぶん原価率があってないな」と思うものがあります。
でも、数多く作っていない。早いもの勝ちです(笑)
ZARAなどは、ものによってハイブランドと同じ生地を使っている可能性もある。
そういうものが、ポン、ポンとあるんです。


―― それがわかると、楽しいですね~。

ファストファッションブランドは「冬物は素材的に無理だな」と思うものが多いけれど
夏物は、充分です。それに思い切って楽しい冒険もできるでしょ。
私のヴァカンス用のパッケージは、ほとんどファストファッションですから。


ゴルチエとセブン&アイのコラボは、すごくよくできていましたね。
ニットなんか、とても手がかかっていて
この値段でよくやっているな~と思いました。

ブログでは、こういった、アパレル業界の裏話もときどき載せるのですが、
私たちにとっては当たり前でも、多くの方は知らないようなので、喜ばれています(笑)。









(その3に続く)



インタビュー/窪田千紘
撮影/南都礼子
構成・文/藤岡信代



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