3回にわたってお届けしてきたマダムHこと佐藤治子さんのインタビュー。
最終回は、50歳を過ぎてからのおしゃれの秘訣や、
働きながら子育てをしてきた大先輩としてのライフスタイル観を伺いました。

 
これまでの記事はこちら ↓

大人の女性のロールモデル現る!~佐藤治子さんインタビュー(1)
マダムH流おしゃれのルール~佐藤治子さんインタビュー(2)
 

 
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―― マダムにとって50歳というのは、どういう年齢ですか?

50歳は、おばさんになるかどうか、大きな分かれ道かもしれません。

日本人ってお嬢さんの時代が長いじゃないですか。
若く見られるから40歳くらいまで“お嬢さん”風で通るでしょ。
気をつけないと、お嬢さんから一気におばさんになっちゃうのが、50歳だと思うの。
「女の時代」が少ないんですよね。
大人の女にならずにおばさんになってしまう。

それは、服装もそうだし、50歳くらいから体型も変わってくるから
大きく分かれますよね。


―― 40歳くらいまでは、なんとかなるんですよね。
私ももうじき50歳になるので、そろそろおばさんになる境にきています。

50歳が境目だと感じますね。
でも、今の人は、40歳くらいから「着るものがわからない」という人が多くなる。


―― 30代後半から体型が変わるし、感覚は20代のままだから
選ぶ服が似合わなくなってくるんです。

たぶんね、今のファッションがほとんど、若い人対象のトレンド物だから
「それを着ないといけない」と思ってしまうんじゃないかしら。


―― 今回、マダムの本を読むと、「これでいいんだ」と安心するんですけど、
日常的に流れてくる情報は、若い人のファッションなんですよ。
そうすると、自分とのギャップが……。

私、以前にブログで、
ファッション鬱になっている人から悩みをもらったときに
「あまり外で洋服を見ないようにしたほうがいいですよ」
と答えたことがあります。

しばらくファッションから遠ざかってみて、
いま手元にあるものだけを着てみて、
本当に欲しいものが出てきたらショッピングに行ってくださいねと。

今は情報がありすぎて、目的もなく買いものに行くと、
やっぱり変なものを買ってしまいますよね。




―― そんなに、おきれいでいらっしゃるのは、何か秘訣があるんですか?

美容については、
酔っぱらって帰っても顔を洗う(笑)。
お酒は飲まないので、これは冗談です~。
時間がなくて最低限のことしかできませんが

ブログで「3つのメンテナンス」という記事を書きました。
1つめは、歯のクリーニング。
中年以降の人がきれいに見えるのは、健康的な真っ白い歯です。
肌のくすみと同じように歯もくすんできますから。

2つめは、髪。
ブログで「“ムッシュ”のサロンに潜入取材」という記事を書いたのですが、
(マダムのご主人は「ヘアサロン・レピス」 のオーナー)

カット椅子に座らないで、中腰でカット、すきバサミも使わない美容師って、
いまめずらしいそうです。
只でさえ、ボリュームの少なくなった髪に、すきバサミを使うとバサバサになる。
髪が伸びたときに、その技術の差がわかるのだそうです。
 
ムッシュ(夫)のポリシーとして、
家で、自分で簡単に髪がまとまらないカットはダメ、ということです。

街で、中高年の女性グループがお茶をしたりしているのを見ると、
みなさん、ファッションには気を使っているけれど、
髪は伸ばしっぱなしでぼさぼさという方も多いですね。
ファッションよりも、むしろ髪の清潔感に気を配ったほうが、
全体の印象がよくなります。


最後は、清潔な肌です。
高額な化粧品を使っていた時期もありましたが、今はシンプルなケアだけです。
冬場は乾燥が大敵なので、
質の良いオイルをお風呂あがりにたっぷりつけるくらいかしら。
それから、やっぱり食生活でしょうか。
基本的には「おうちご飯」で野菜たっぷりの一汁三菜。
質素で身体にやさしいご飯が中心です。


―― ムッシュと結婚されて長いのですか?

43歳のときに子連れで結婚したので、もう26年ですね。
子どもが1歳のときから、ずっとシングルマザーでしたので
40代の扉を開いたときにムッシュに出会いました。


―― シンデレラのようですよね。

ずっと、母子家庭で生きていくつもりでしたので
棚からぼた餅?(笑)

急に家族3人の生活になったので
それぞれ戸惑いがありまして・・

私も、息子も、最初は「佐藤さん」って呼んでいて(笑)
急に「お父さん」なんて呼べないし、ムッシュにしても
ずっと独身を謳歌してきた人が、急に“いいお父さん”になれる訳がない。
ふたりに「無理しないでいいからね」と言ってました。

そのときに、「家族って作っていくものなんだな」と思いましたね。


―― ご結婚されたのは、息子さんが12歳のときですか?
結構むずかしいころですよね。

まわりにはそう言われましたね。

結婚するとなったときに、
私は、「息子が理解するのが難しければ、大きくなるまで別居でもいいかな」
と思っていたのですが、
お互いに無理しないようにしたら、いつの間にか本当の家族になっていた。


―― シングルマザー時代も長かったんですね。

そうね、12年間ですね。
はっきり言って、当時もデザイナーとして結構な収入があったからできたことです。


親が絶対に必要な「ここ」というところだけは息子としっかり向き合って
ほかのところで、人の手を借りられるところは
出来るだけお金で解決してきました。


―― その潔さって大事ですよね。

「大学を出すくらいのお金を使いましたね」と言われましたけれど、
それでいいと思いましたから。
やっぱりある程度の収入がないとシングルマザーは無理だと思います。
シッターさんを2人くらい交代でお願いして
フルタイムで働いて、海外出張もこなしていましたし、
国内出張は「子連れ」で行くこともありました。

私たちの時代は、
「会社が子どもを産んでくれ、といったわけではないから」と
面と向かって言われながら働く時代でしたから。
いまだったら考えられないですけれどね。

私が仕事から離れたのは、産休の3カ月間と
夫が病気になった10年前の1年だけ。
本格的にデザイナーとして働きはじめてから45年です。

子供が小さい時、専業主婦のお母さんたちに、
「いいわね~、素敵な仕事があってうらやましいわ~」と言われたこともありますけれど

たとえば、お天気の良い日に、散歩に連れて行きたいな・・と思っても
その気持ちを振り切って仕事に出かけなければならないわけで
私の方こそ、乳母車を押しているお母さんがうらやましかった。


―― そうやって仕事が続けられるコツはなんだと思いますか?
子どもの手が離れて、もう一度、仕事をしたい女性が多いと思うのですが。

「仕事が好きだから」以外にないですね。
好きなことで、ちゃんと生計を立てているという自負でしょうか。

子どもを預けて働いている後輩には、常々
「子どもは、なんらかの犠牲に絶対になっているのだから、
恥ずかしくない仕事をしないとダメ」と言ってます。











インタビュー/窪田千紘
撮影/南都礼子
構成・文/藤岡信代



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