おはようございます。
Pianosalon主宰、 フォトスタイリストOTOHAです。
一足早く芸術の秋を感じていただける音楽情報をお届けいたします。
私たちが日頃、触れる機会が多いのは、YAMAHA、KAWAIなどの日本のブランドのピアノだと思いますが、世界中には、数多くのピアノメーカーのピアノがあります。
約100年前、海を渡ってやってきたドイツ・ザイラー社の半円形のヴィンテージピアノのお話です。
今年1月、京都白沙村荘橋本関雪記念館に、日本画家・橋本関雪氏の愛娘妙子さん(歌人の高折妙子さん)のためにドイツザイラー社より取り寄せたピアノが90年ぶりに里帰りしました。
今年初夏、縁あってそのピアノを訪ねることができました。
京都銀閣寺にほど近い京都白沙村荘橋本関雪記念館は、新古典と呼ばれる絵画を次々と生み出した日本画家橋本関雪氏の邸宅で、現在は生涯にわたって描かれた美術作品や半生をかけて作り上げた庭園を拝観することができます。
ザイラーのピアノは、関雪氏のかつて大作を描くために造ったアトリエ『存古楼』に設置されていました。
撮影:眞田佳子さん
撮影:眞田佳子さん
今回展示されていたピアノの特徴は、なんといっても丸い半円形になっているところ♪
何故半円形なのか、詳細はわからないそうですが、右下のくぼんだ円の部分が、音響上の大きな役割を果たしているそうです。
幸運にも試弾させていただき、その温かい味わいの音色に魅了されました。存古楼は板張りで、周りがガラス、高い天井ということもあり、とても豊かに響くのです。
幸運にも試弾させていただき、その温かい味わいの音色に魅了されました。存古楼は板張りで、周りがガラス、高い天井ということもあり、とても豊かに響くのです。
今となっては、とても貴重な象牙の鍵盤です。
ほかにも美しいデザインに定評のあるザイラーらしいこだわりが随所に見られました。
ヨーロッパ王室御用達として求められていたザイラーは、第2次世界大戦後、レグニツァにある本社と工場を失いましたが、100年以上のピアノ製造における専門技術と経験は失われることなく、創業160年の現在も生産し続けているそうです。
どの楽器にも作る人、贈る人、贈られる人のドラマがあるのだと改めて感じました。
また、この秋、橋本関雪記念館様のご好意により、このザイラーのピアノによるリサイタルを開催することになりました。
プログラムは、以前このサイトでもご案内したエリック・サティの曲目たちです。
ザイラー社の創設者は、プロの演奏家が使うコンサート用ピアノに始まる高級品だけではなく、より広く多くの人々に求められる品質の良いピアノ作りをビジョンと掲げていたそうです。
同じ時代、フランスで大衆の欲望をマーケティングしながら音楽を生み出していたサティの音楽を
このピアノで奏でることのできること、大変幸せです。
深まりゆく秋、国の名勝に指定される庭園を眺めながら、それぞれの心に映るサティを楽しんでいただけますように♪
【参照サイト&書籍】
ザイラー日本総代理店東洋ピアノ製造株式会社HPより
きょうとあす「家庭画報が世界に贈る京都サイト」より
ヤマハ・ミュージック社「月間ピアノ20175月号」より
★エリック・サティを楽しみたい方はこちらもどうぞ★
後篇 サティ音楽のスペシャリスト ピアニスト柴野さつきさんインタビュー