◆◆◆神戸の春はいかなごと共に始まります
◆◆◆家ごとにことこと作る「くぎ煮」には

◆◆◆特別なあの日の思いも重ねられて


「いかなご」って、ご存じですか?
土地によっては「こうなご(小女子)」とも呼ばれる小さな小さな魚です。

いかなご新子の漁が解禁になると
神戸の春が始まります。

今年は3月3日に解禁になり
それ以来、神戸市垂水区の沿岸では
早暁から漁をする船の灯が灯るのです。

神戸や明石ではどの家庭でも
それこそキロ単位で新子買ってきては
「くぎ煮」という佃煮を作るのに
余念がありません。

それぞれの家ごとの味があるのでお裾分けしあったり、
地方の親戚や友達に春の便りとして送ったり。
いろいろな料理法があるなかで「くぎ煮」はまさに王道なのです。

くぎ煮以外では釜揚げ新子(新子をゆでたもの)をぽん酢でいただいたり、かき揚げや卵とじ、青ねぎとの酢味噌和えなどです。

今では、海からちょっと離れた地域でも、スーパーでいかなごの生新子が売られています。
時間をみはからってスーパーに行くと、その日の朝に獲れた新子を購入できます。

そればかりか、くぎ煮の材料(醤油、ざらめ、みりん、水飴など)を売り場の一画で一揃えできてしまいます。

各家庭でしょうが味、さんしょ味、
柑橘風味など、好みの味付けをします。

遠くの親戚に送る人も多いので郵便局には「くぎ煮ゆうパック」なるものもあるほど。
これって、やっぱり神戸や明石だけですよね?
もともと「いかなごのくぎ煮」作りは
神戸市長田区・須磨区の海沿いや
明石市で昔からさかんでした。

それが周辺地域にも広まってきたのは、
阪神・淡路大震災の年以降のように思われます。

震災のあったあの年は特に春が待ち遠しかったものです。
その待ちに待った春を、いかなご新子漁の解禁のニュースが伝えてくれたのです。

その印象が心に残っているために
私にとって「いかなごのくぎ煮」は、
震災復興のシンボルでもあるのです。

「神戸のいかなごの春」は3~4週間続きます。

スタイリング&撮影
フォトスタイリスト 皆本礼子
http://ameblo.jp/jreiko/